2025-03-24
第24話 ミッション:多様化するニーズに応えよ
令和6年度の確定申告が今年も期限ぎりぎりでようやく終わりました。毎年、事務作業を溜めに溜めたツケが回ってきて、領収書や書類の山と死に物狂いで向き合うこの一大イベントは、もはや春の訪れを感じさせる風物詩といえるかもしれません。
さて、今回はツアーのニーズの変化についてお話しさせて頂きます。ミキキートスが提供するツアーは、マイナーチェンジこそあれ、ここ数年基本のラインナップはほとんど変わっていません。成田空港、国会議事堂、豊洲市場以外のツアーはなかなか売れず、気が付けば以前このコラムで触れさせて頂いた大田市場見学ツアーも、すっかりオワコンの様相を呈しております。
一方、ツアーを利用するお客様のニーズは、ここ数年で大きく変化してきたように思います。そもそもミキキートスは、個人のお客様を募って実施するいわゆる募集ツアーのみを実施するところからスタートしました。それが、いつからか団体利用を承るようになり、小学校の校外学習を承るようになり…と、様々なニーズに応え、少しずつ事業を拡大してきました。そして、時には想像もしていなかったような新しいニーズに気づかせられることがあります。
都心立地で利便性の高い羽田空港ばかりがもてはやされがちだが、
依然として日本の表玄関として君臨する成田空港。
2025年開催のデフリンピック関連でも多くの方が利用することだろう。
2年前の2023年には、ろう者の団体が成田空港見学ツアーを利用されるということが数件ございました。今年2025年に日本で開催されるデフリンピック(聴覚障碍者のための世界規模の総合スポーツ競技大会)に備え、視察を兼ねて成田空港を見学したいというニーズでした。ただ、最初にこのお話を頂いた時は、さすがに対応が難しいのではないか?と感じました。イヤホンガイド®を通じて、お客様の耳にご案内を届けるツアーをずっと提供してきた私共にとって、イヤホンガイド®なしでのご案内は、ミキキートス創業以来初めてとなります。もちろん、手話通訳の方が同行し、ガイドのご案内を訳して下さるわけですが、耳からご案内を聞いて頂きながら同時に小冊子をご覧頂くというやり取りが出来ません。また、飛行機や掲示板などをご覧頂きながら、お話をするというようなことも難しいわけです。これに関して、私たちにできる工夫はほぼ皆無で、唯一対応できたのが口の動きが見える透明なマスクを着用することくらいでした。無力さを痛感した案件でしたが、それでも「楽しかった!」「ありがとう!」と手話で伝えてくださった光景は忘れることができません。先述した通り、デフリンピック開催を控えていることによる特需のようなものでしたので、その後ご利用頂く機会には恵まれていませんが、私共としても大変貴重な体験をさせて頂きました。
事務所でツアー準備中の様子。
通称マグターレと呼ばれるデザインのトートバッグや、
マグロのぬいぐるみなどの小道具は、
ツアー参加者との距離を縮める上でとても重要な役割を担う。
そして、いうまでもなくニーズが大きく増えてきているのはインバウンドです。私共は現在日本語のみの対応となっており、英語も含めた外国語対応は一切行っておりません。また、インバウンドのお客様と接する機会がないため、ノウハウに乏しく、彼らの“ツボ”が分かりません。そんなこともあり、インバウンド案件は基本お断りをするのですが、通訳者をつけるので案内してほしいとよくお問合せを頂きます。
たとえ通訳者がいるとしても、基本は「インバウンドを取り扱う事業者に当たってください…」とやんわりお断りムードでお話をさせて頂きます。通訳者を介するということは、ご案内できる量は半分以下となりますし、彼らの“ツボ”を押さえていないので、満足のいくご案内が出来ないという後ろめたさがあり、その方がお客様にとって良いことであると考えるからです。ただ、そのような駆け引きを経てもなお、ご用命頂ける方向でお話が進むことになります。
もちろん、お引き受けした以上はベストを尽くすわけですが、お客様向けに作成している小冊子も当然日本語のみとなり、間に合わせの簡易な資料を基にご案内しなければなりません。その他にもイレギュラーのオンパレードとなるので、私を含め、ご案内するガイドは皆不安でいっぱいです。まぁ、ふたを開けてみればそれなりにご満足頂けたりもするわけですが、リソース不足でインバウンドにダイレクトに対応できていない現状を、ただただ申し訳なく、また歯痒く感じる次第です。
ただ、今後も同じ傾向は続きそうなので、小冊子だけでも外国語に対応したものを作成しようかと考えているところです。いずれインバウンドに正式対応した際には、自ずと外国語版の冊子は必須となりますので、その準備にもなりますしね。