2022-06-17
第28話 ガイド時代⑧
天職であるガイドの仕事。そして、憧れの職業に…
2020年の3月に現地ツアーの実施を全て取りやめ、それ以降はオンラインツアーのみを細々と展開してきました。ツアー内容のアップデートは勿論ですが、運営の方法についても少しずつ最適化され、開始当初とは別物と言っていいくらいスマートになっていきました。
一方で、ほぼ在宅ワークとなり、運動量が激減したことで体重が過去最高を記録するなど、元々太りやすい体質の私はスマートの対極にありました。自己管理が出来ていないと言われればそれまでですが、日に日に重たくなっていく体になす術もありません。昔から顔に肉が付きづらいということもあり、オンラインのカメラ越しにはほとんど気が付かれないことが不幸中の幸いでした。
さて、そんなオンラインツアーONLYの日々を過ごしていた2021年の6月頃、成田空港校外学習プログラムという、小学校の社会科見学向きにご案内するツアーの依頼が3件舞い込んできました。秋口のご利用ということで、コロナの状況が予測不能なことからお断りする選択肢もありましたが、教育旅行の性質上、お引き受けしないわけにもいかないという判断から、コロナの感染状況によってはお引き受けできない場合があるという、いわゆる”条件付き”でご案内を承ることにしました。
幸い、ご案内を実施する11月にはコロナが比較的落ち着いており、KF94マスクの着用、手ピカジェルの携帯など、対策を十分講じて実施することになりました。元々私共はイヤホンガイド®をご用意しておりますので、ソーシャルディスタンスの確保についてはばっちりです。成田空港校外学習のご案内についてはおよそ2年ぶり、現地ツアーのご案内についても2020年の3月以来で1年半以上ぶりということで、始まるまでは大きな不安に付きまとわれていました。それは、スムーズに言葉が出てくるか?ということもありましたし、お客様を引率しながらツアーをご案内する感覚を忘れそうになってしまっていたからです。
しかし、そんな不安はご案内が始まった瞬間に吹き飛びました。本当に不思議なもので、ブランクなどまるでなかったかのようにスムーズにご案内をすることが出来たのです。そして、ガイドというお仕事を形容する時にはあまり適切ではないかもしれませんが、ノリノリで楽しくご案内をすることが出来ました。コロナ禍でオンラインでしかご案内をしてこなかった2年弱、カメラ越しに“一方通行”なご案内を続けてきた自分にとって、お客様の顔を直接見ながら、コミュニケーションを取りながらご案内を出来ることはこのうえない喜びだったのです。
この時、私にとってガイドというお仕事は天職なのだと改めて確信しました。添乗員(ツアーコンダクター)の時代も、旅行業に足を踏み入れる前にも、それぞれの仕事でやりがいを感じる機会は沢山ありましたが、これほどまでに「仕事が楽しい!」と思える感覚はおそらくなかったと思います。「好きなことは仕事にしてはいけない(好きなことには趣味として向き合うべき)」というひとつの考え方がありますが、私の場合はまさに、好きなことを仕事に出来ている大変恵まれた存在と言えるかもしれません。
最終的に1校はコロナに関する事情でキャンセルとなってしまい、2021年秋には2校のご案内のみにとどまりましたが、ガイドとしての自分の存在を再確認できたという意味においても、大変良い機会でした。
(国会議事堂オンライン学習プログラムご案内中の筆者)
時を同じくして2021年の11月末、年始からずっと温めていた企画だった、小学6年生向けの国会議事堂オンライン学習プログラムが日の目を浴びました。コロナ禍で国会議事堂を訪れることが出来ない学校の為に、その代替となるプログラムをオンラインで提供しようという目的で準備をしていましたが、お申込みが全くない状態が続いていました。しかし、コロナがなかなか落ち着かず、校外学習の延期もこれ以上できないという判断で、ぽつぽつとご予約が入るようになりました。ピークは2022年の3月で、合計4校のご利用がありました。事前のお打ち合わせをしていく中で、国会議事堂に社会科見学に行けなかった児童たちに、何か代わりにしてあげられることはないかという先生方の思いを強く感じました。中には模擬遠足のような形で、リュックを背負いお弁当を持って登校して、その流れで国会オンライン見学に参加する学校もあって、卒業を控えた児童の皆さんの様々な気持ちに思いを馳せながらご案内をさせて頂きました。
2年近く在宅ワークを徹底していることもあり、事務所には郵便物の確認でたまに寄る程度になっていたのですが、2か月ぶりくらいに郵便物を確認しに事務所に寄った時に、国会オンライン見学をご利用頂いた学校様から郵便物が届いていました。封を開けてみると、そこには児童の皆さんからのお礼の手紙が入っていました。私はあくまでもお仕事として国会のことをご案内しただけに過ぎませんが、お礼の手紙には涙が出そうになるような、温かい言葉が並んでいました。
どのお手紙も私の宝物であることに変わりはないのですが、その中にひとつ、特別な感情を抱いたお手紙がありましたのでご紹介させて頂きます。
(オンライン国会見学に参加した児童から寄せられたお手紙)
「庭野さんへ 先日は国会ツアーのガイドをしてくださりありがとうございます。国会のことは事前に調べていたんですけど、全くわからないことだらけですごく勉強になりました。ほかにもふつうにいったら説明されないところも1、2分も使って説明していただいたのでとてもうれしかったです。自分は今将来の夢について考えていたので庭野さんの仕事もとてもいい仕事だなと思いました。小学校の思いでを作ってくださりありがとうございました。」
子供なりのリップサービスもあるかもしれませんが、この児童さんは私のご案内を見て、自分が将来なりたい仕事リストの中に「ガイド」を入れてくれたのです。これはどんな誉め言葉よりも嬉しいかもしれません。ガイドというお仕事は、社会的には決して地位が高くなく、報われないことも多いお仕事ではありますが、こうして誰かを楽しませ、憧れを抱いてもらえる存在になれたのだとしたら、それは願ってもないことです。これからもガイディングを通じて、1人でも多くの人にガイドというお仕事の素晴らしさを伝えていけたらと考えています。
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EventOffice ミキキートス代表。
中央大学卒業後、観光とは異業界での勤務経験を経て、旅行会社で国内外の添乗員・ガイド業務に従事。
2015年からは、主催のミキキートスにてイヤホンガイドを使用した参加型ツアー事業を開始。「大人向け社会科見学」や「親子でまなぶ」をコンセプトとし、築地/豊洲市場、成田空港や国会議事堂見学をはじめとした多数の人気ツアーを企画。
「名物ガイド」として多くのメディアで注目を集める。
新型コロナ禍以降は、オンラインツアーガイドに注力。最近では観光地や企業とのコラボイベントも始まり、コロナ禍でも多忙な日々を過ごす。
目下“偉大なる素人”を目指して邁進中。
WEBサイト:https://www.mikikiitos.com/