2022-06-01

第26話 ガイド時代⑥

第26話 ガイド時代⑥

ガイディングに対する4つのポリシー


無事に幕を開けた豊洲市場見学ツアーは、お陰様で売れに売れ続けました。募集型に加え、団体利用のニーズも多く、土曜日のみならず平日にも沢山の予約を頂戴するようになりました。ご案内に加え、貸切利用のお問合せ対応をしなければいけないなど、私自身、かなりやつれてきた時期だったかもしれません。


そんなある日、株式会社ケンネットの社長と営業の方がお二人でツアーに参加したいとご連絡を下さいました。以前に一度、ガイディングレシーバーの数が足りなくなり、イヤホンガイド®をレンタルしたことがあったのですが、その時にミキキートスのことを知ってくださり、興味を持ってくださったようでした。このことがご縁となり、それまでずっとレンタルで使用してきたガイディングレシーバーから、自社機材としてイヤホンガイド®を導入することになりました。豊洲ツアーの大ヒットで、それを賄えるだけの体力がようやく備わっていたのです。


一見同じように見えるご案内用の無線機器ですが、電波の届く範囲が異なったり、デジタルなのかアナログなのかなど、細かい所で違いがあります。私が購入を決めたのはアナログ電波の機材でした。表現が難しいのですが、デジタルよりもクリアで、温かみのある音質でお客様に声を届けることができます。お客様にとっては言われないと分からないくらいの違いかもしれませんが、モニタリングしながらご案内を重ねてきた経験からは大きな差を感じました。今後この機材を使ってご案内が出来ることを、とても嬉しく思いました。


(ついに自社機材として導入したイヤホンガイド®)


さて、豊洲市場見学ツアーの大ヒットを受け、更にガイドを増員する必要が出てきました。これまでは最大30名弱くらいの団体までしかご対応できなかったのですが、観光バス1台分=50名弱対応できるようにしておくと、より多くのニーズを拾えるからです。


社会科見学要素が強い特殊なご案内形態である上に、零細な事業者であるミキキートスを選び、応募して下さる方々がいることは本当にありがたいことだと思っています。そんな皆さんがガイドデビューをする時に、心構えとしてお話しさせて頂いているポリシーのようなものがあります。それは次のようなものです。


①謙虚であること
当たり前と思うかもしれませんが、ガイド職に就いている人の中には、これが出来ていない人が意外と多いです。例えば、とっておきの面白いトピックがあったとして、それをご案内する時に「特別に“お教え”します」などと口走ってしまう人がいます。お客様が「教えて下さい」とガイドに尋ねるのは良いのですが、ガイドが自分で「教える」を使うのは不適切。あくまで「ご案内する」を使うべきです。細かいことかもしれませんが、ガイドはお客様に観察されるお仕事でもあります。無意識にマウントを取ることがないように気を付けましょう。お客様と同じ目線に立ち、「こんな面白いことがありますよ」と楽しいことを共有するというスタンスでご案内をすることが大事です。


②お客様を主役と考えること
自分がご案内したことでお客様が喜んでくれることは、ガイドにとって何よりの喜びであり、その結果として気持ちよくツアーを終えることは大いに結構です。ところが、無駄にギャグを連発したり、一方的に知識をひけらかして悦に浸り、気持ち良くなっているような人をたまに見かけます。無自覚のうちに自分が主役になろうとしてしまっているのです。よほどカリスマ性のある方であったり、有名人がガイドをするのであれば話は別かもしれませんが、あくまで主役はお客様です。観光・見学をよりお楽しみ頂く為のお手伝いをするというスタンスでご案内をするようにしましょう。


③情報量はインプットよりアウトプット
お客様にご案内をする上で知識は財産です。知識は多いに越したことはありませんが、いくら知識を持っていても、アウトプットが出来なければ意味がありません。「私は何でも知っている」というようなスタンスのガイドさんに限って、意外とアウトプットはうまくできていなかったりします。逆に言えば、アウトプットさえ上手にできれば、知識の量が少なかったとしてもお客様により喜んで頂けるご案内をすることが出来ます。例えば、9知っていて3しかアウトプットできない人よりも、6しか知らないけど5アウトプット出来る人の方が、お客様にとってはよいガイドということになります。知識の量や暗記することにこだわらず、引き出しをより沢山開けられるようになってほしいと思います。


④完璧である必要はない
ガイディングにおいて、完璧は必ずしもベストではありません。隙のない完璧なガイディングは見る人を圧倒するかもしれませんが、一歩間違うと偉そうに見えたり、マウントを取っているように見えてしまうかもしれません。例えば、ちょっとした言い間違いや噛んでしまうことで、お客様がクスクスっと笑うようなことがあります。そのような小さなハプニングがかえって人間味を感じさせ、お客様が親近感を覚えてくれることもあります。私たちはAIではないので、完璧を求めるのではなく、ガイドさんそれぞれの個性を大事にしたご案内を心がけて下さい。


以上がミキキートスのご案内に対するポリシーとなります。これらは、私がこれまで添乗とガイドのお仕事を通じて、感じたり経験したりしたことを基にまとめ上げたものになります。理想のガイド像については、いろいろな考え方があってしかるべきだと思いますが、ミキキートスの看板を背負ってご案内をして頂くガイドの皆さんには、是非この4つを肝に銘じてご案内に当たって頂きたいと思います。


庭野大地
庭野 大地

EventOffice ミキキートス代表。
中央大学卒業後、観光とは異業界での勤務経験を経て、旅行会社で国内外の添乗員・ガイド業務に従事。
2015年からは、主催のミキキートスにてイヤホンガイドを使用した参加型ツアー事業を開始。「大人向け社会科見学」や「親子でまなぶ」をコンセプトとし、築地/豊洲市場、成田空港や国会議事堂見学をはじめとした多数の人気ツアーを企画。
「名物ガイド」として多くのメディアで注目を集める。
新型コロナ禍以降は、オンラインツアーガイドに注力。最近では観光地や企業とのコラボイベントも始まり、コロナ禍でも多忙な日々を過ごす。
目下“偉大なる素人”を目指して邁進中。


WEBサイト:https://www.mikikiitos.com/


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