2022-04-20

第21話 ガイド時代①

第21話 ガイド時代①

添乗員からガイドへ…小さな成功体験


20話もの果てしない遠回りを経て、ようやく私が今しているお仕事、ツアーガイド兼事業者代表としてのお話をしていきたいと思います。起業した経緯などは第1話で詳しくお話しさせて頂いておりますので、詳細はここでは割愛させて頂きます。現地集合・現地解散の着地型観光ツアーを企画・運営する事業【ミキキートス】を立ち上げたのはまだ在職中の2015年4月で、実際にご案内を開始したのは6月末のことでした。


最初に企画したのは羽田空港の見学ツアーです。皆さんご存知の通り、羽田空港は日本一の旅客数を誇る国際空港で、ひっきりなしに飛行機が離着陸し、空港利用者のみならず見学者にとっても大変魅力的な空港です。空港近くの整備地区でANAやJALの機体工場見学が行われてはいるものの、意外なことに羽田空港そのものをご案内するガイドツアーは存在していませんでした。この空港の魅力をお客様に伝えるツアーを企画すれば、お客様に喜んで頂けるのはもちろんのこと、私自身も楽しくお仕事が出来るとのではないか?と考えたのです。


見学ツアーを運営するにあたって、大きく2つしなければいけないことがあります。1つはガイドとしてご案内する知識の勉強=商品の部分、もう1つは集客=販売の部分です。


知識の勉強、すなわちガイディングについては、羽田空港に関する雑誌や書籍などを読み漁り、そこからご案内したら面白いと思われるトピックを抜粋する作業からスタートしました。調べてみると興味深いトピックが沢山あり、添乗員としても空港を利用していたにもかかわらず、知り得ないことばかりでした。


ピックアップしたトピックを基に、現地に赴いてのフィールドワークを行います。どの場所で、どのタイミングでそれぞれのトピックをお話ししたら楽しんで頂けるかを想像しながら、見学場所からご案内の対象物がどのように見えるか、他の利用者に迷惑をかけない導線は…等、実際のツアー進行に必要な確認を行いました。そのような作業を経て創り出した、ツアー企画者としてのデビュー作は 「羽田空港見学ツアー -3つの展望デッキから飛行機を眺めてみよう-(初心者向け)」 というタイトルに決まり、所要時間2時間30分、おひとり様2,500円という内容で販売することになりました。


(最初のツアーの告知写真。手探りで作ったとはいえ、今からすると考えられないほどの低クオリティ)


次に集客=販売についてですが、こちらはガイディングと異なり、全くノウハウがありません。事前に決まっていたことは、運営コストを最小限に抑えるためにネット販売のみとすることくらいでした。ブログに毛が生えたようなクオリティの自社サイトは既に作成していましたが、予約のシステムをどのように構築したらよいかが分かりません。お金をかければ自社サイトに予約システムを組み込むこともできることは分かっていましたが、資金的にも知識的にも対応ができない状況でした。そこで、大手検索サイトのYahoo!が運営するPassmarketというデジタルチケット販売のサービスを活用することにしました。数%の手数料こそ控除されますが、チケットの販売が手軽に出来ることと、自社サイトの露出が少ない部分を大いに補ってくれるという期待もあり、当時の状況としてはベストな選択肢と言ってもいいものでした。


さて、いよいよ販売がスタートしました。一番の心配は、売れるのかどうか…という実にシンプルな問題でした。売れなければ事業が成り立ちません。告知期間が足りないと判断して販売を全て取りやめた設定日が1つありましたが、事実上の初回設定日となる6/28(日)は午前の部9名様、午後の部7名様が申し込みをして下さいました。主催する記念すべき初めてのツアーの催行が決まったのです。


添乗員時代からなぜか本番に強く、始まるまでは不安で不安で仕方がないくせに、いざスタートしてしまうとうまく立ち振る舞えるところがありました。今回も例に漏れず、初回とは思えないほど緊張せずにご案内をすることが出来ました。しかし、ご案内のクオリティはまた別の話です。


ガイドのデビュー戦ということもあり、未熟なガイドと思われたくない一心からつい知識武装してしまい、初心者向けのツアーであるにもかかわらず、少しマニアックなご案内を入れ込み過ぎてしまったのです。お金を払って参加してくださっているのだから、お腹いっぱいにしてあげなければ!と、知識てんこ盛りでご案内した結果、食べきれず残したり、胃もたれさせるような状況になってしまいました。


お客様の反応を見れば、楽しんで頂けているかどうかは良く分かります。「なんか掴めてないなぁ…」と気付いていながらも、経験が乏しくスキルが未熟な私には軌道修正する術がありません。とりあえず、時間内にお約束した行程をご案内しきるということを最優先し、なんとか初日のツアー2本を無事に終えることができました。ツアー終了時には「楽しかったです」というような声をかけて頂いた方もいて、一定の手ごたえは感じられたものの、反省点の多いガイディングとなりました。今でこそインプットした知識のアウトプットの加減ができるようになりましたが、それは一朝一夕で出来るようになるものではなく、ご案内の回数を重ねていくしかありません。


色々と反省すべき点はありましたが、ツアーの企画から販売、そしてご案内まで…全てを一人でやり遂げたことで、私にはひとつの成功体験が出来ました。そしてこの小さな成功体験があったからこそ、今でもミキキートスの事業を継続し、チャレンジを続けることが出来ているのです。


(羽田空港を案内していた当時の筆者)


庭野大地
庭野 大地

EventOffice ミキキートス代表。
中央大学卒業後、観光とは異業界での勤務経験を経て、旅行会社で国内外の添乗員・ガイド業務に従事。
2015年からは、主催のミキキートスにてイヤホンガイドを使用した参加型ツアー事業を開始。「大人向け社会科見学」や「親子でまなぶ」をコンセプトとし、築地/豊洲市場、成田空港や国会議事堂見学をはじめとした多数の人気ツアーを企画。
「名物ガイド」として多くのメディアで注目を集める。
新型コロナ禍以降は、オンラインツアーガイドに注力。最近では観光地や企業とのコラボイベントも始まり、コロナ禍でも多忙な日々を過ごす。
目下“偉大なる素人”を目指して邁進中。


WEBサイト:https://www.mikikiitos.com/


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