第6話 2024年の一番マグロはいくら?!マグロにまつわるエトセトラ

気温が高い日が続き、感覚が麻痺していますが、いよいよ新年の足音が聞こえてくる時期となりました。 「そろそろ年賀状買わないと」「今年から年末ののぞみは全席指定席らしいよ!」「あの得意先回るの面倒だな…」などなど、頭を悩ませることが多いものの、新年の訪れを楽しみにしている人が多いのではないでしょうか。
そんな新年の風物詩として、近年すっかりおなじみになったマグロの初セリ。高額で競り落とされた立派なマグロがテレビの画面に幾度となく映し出されるので、思わずお寿司屋さんに足を運んでしまったという人も多いのではないでしょうか。今回はそんなマグロの新年初セリについて書いてみたいと思います。これを読めば、初セリのニュースがより身近に感じられるかもしれませんよ。

豊洲市場 7街区水産卸売場棟にあるクロマグロの巨大オブジェ
さて、新年の初セリ、すなわち市場で取り引きが行われる最初の日は、毎年同じ1月5日と決まっています。一部例外はあるかもしれませんが、基本的に日本全国の市場が毎年1月5日を新年最初の営業日にしていることもあり、「魚河岸初競り」の日として記念日にも制定されています(1970年/S.45年 日本魚河岸組合制定)。 ちなみに豊洲市場は原則毎週水・日祝がお休みとなりますが、1月5日は曜日にかかわらず営業日となります。
新年の初セリで一番高い金額が付くマグロのことを一番マグロと言います。皆さんがニュースやワイドショーで目にするのはこの一番マグロです。ここは勘違いしがちなところなのですが、一番マグロはキロ単価が一番高いもののことを言います。数千万円から億超えのマンションもびっくりの値段につい目が行ってしまいますが、こちらはキロ単価×重量(総キロ数)で算出された総額となり、必ずしもこの金額が高いものが一番マグロになるとは限りません。また、結果として一番マグロになるのであり、先に「このマグロが今年の一番マグロですよ!」と宣告されたものを高く競るわけではありません。もっとも競り落とす側もプロですから、自ずと価値の高いマグロに着目します。その結果、お目当てのマグロが被り、セリがヒートアップし高額の取り引きとなるのです。
ついマグロばかりに目が行きがちですが、そもそも新年の初セリは市場全体がご祝儀相場となります。たとえば2023年大田市場の初セリでは、山形県産のさくらんぼ「佐藤錦」500gが史上最高値の130万円で競り落とされました。もちろん、マグロやさくらんぼは極端な例ですが、1月5日は市場全体がご祝儀相場に包まれる日となります。新年を無事に迎えられた喜びと、よい1年となるようにという思いが込められて、市場のあちこちで景気の良い取り引きが行われるという訳です。

新年の初セリでは縁起ものである宝船のセリも行われる
それではここで、気になるマグロのセリ落とし金額歴代TOP10を見てみましょう。本来はキロ単価で並べるのが正しいのですが、ここでは分かりやすさを優先し、総額ベースで並べてみました。なお、右端にはキロ単価の順位も記載していますので、併せてご確認下さい。
【歴代一番マグロセリ落とし金額ランキング】
第01位 3億3,360万円(2019年 豊洲)278kg キロ単価:120万円 第01位
第02位 1億9,320万円(2020年 豊洲)276kg キロ単価:70万円 第02位タイ
第03位 1億5,540万円(2013年 築地)222kg キロ単価:70万円 第02位タイ
第04位 7,420万円(2017年 築地) 212kg キロ単価:35万円 第04位
第05位 3,645万円(2018年 築地) 405kg キロ単価: 9万円 第08位
第06位 3,604万円(2023年 豊洲) 212kg キロ単価:17万円 第05位
第07位 2,084万円(2021年 豊洲) 208kg キロ単価:10万円 第06位タイ
第08位 2,020万円(2001年 築地) 202kg キロ単価:10万円 第06位タイ
第09位 1,688万円(2022年 豊洲) 211kg キロ単価: 8万円 第09位
第10位 1,400万円(2016年 築地) 200kg キロ単価: 7万円 第10位
TOP3は異常ともいえる金額ですが、それ以外もまさに破格の取り引きと言えます。もちろん競り落とす側にも打算があり、お正月にメディアをジャックすることができる宣伝効果を見込んでの戦いという側面があります。たとえば、史上最高値でマグロを競り落とした「すしざんまい」というお寿司屋さんの名前は全国的に知られています。史上最高値3億3,360万円という金額のインパクトと共に、人々の脳裏に「すしざんまい」の名前が焼き付けられるという訳です。高額な金額を払って、ゴールデンタイムにむやみやたらにCMを流すよりも、はるかに効果が高くコスパの高い宣伝手法であるということが分かりますね。ちなみに史上最高値3億3,360万円で競り落とされたマグロは、お寿司一貫あたりに直すと約22,000円相当だったそうです。勿論そのままの金額で売るわけではなく、普段の価格でお客さんに提供する為、TVを見た沢山の人達が「こいつは縁起がいいや!」とばかりに店舗に殺到するというわけです。
ちなみに、ここ数年は「ONODERAグループ」が存在感を増しつつあります。寿司店「銀座おのでら」を運営する会社で、マグロ専門の仲卸業者やま幸(ゆき)の協力のもと、2021年から3年連続で一番マグロを落札しています。2024年2月にはハワイに新店をオープンする予定で、大変勢いのある会社です。

冷凍マグロセリの様子。
一番マグロになるのは生マグロだが、
生マグロの売り場は見学者通路から見えづらいところにある為、
現地に赴いても落札の瞬間を見ることはできない。
さて、高額で競り落とされたマグロを釣った漁師さんは一体いくらもらえるのでしょうか?史上最高値で落札された3億3,360万円のマグロを例に、漁師さんの手元にいくら残るのかを考えてみます。まず、漁師さんの取り分は落札価格の約9割近くとなります。大間漁連経由での出荷の場合、以下の手数料が控除されることとなります。
◎大間漁連4%…約1,334万円
◎青森県漁連1.5%…約500万円
◎豊洲市場(卸売業者)…5.5%…約1,835万円
合計約3,670万円
ここで残った約2億9,690万円が漁師さんの取り分となりますが、高額な所得になりますので、それ相応の所得税が課税されることになります。私にはまったく縁がありませんが、高額所得における所得税率は次の通りです。
◎900万円超~1,800万円以下 33%
◎4,000万円以下 40%
◎4,000万円超 45%
今回はぶっちぎりで4,000万円超となりますので、所得税だけでなんと1億3,360万円が持っていかれる計算となります。その結果、漁師さんの手元に残るのは約1億6,329万円となり、3億3,360万円のだいたい半分くらいとなります。
さぞかしウハウハな生活が送れるのだろうと思うかもしれませんが、多くの漁師さん達は借金を抱えていたりするので、その返済に充てたり、ガタが来ている漁船の修理費用に充てたり…と、現実は少しシビアです。また、そうでない場合でも、資金難で見送ってきた設備投資に回すことが多いそうで、贅沢三昧とはいかないようです。私たちの食卓は、こうした厳しい環境で奮闘する漁師さんによって支えられています。マグロをはじめ、海産物を頂く時には漁師の人達への感謝を忘れないようにしたいものですね。
新年マグロ初セリの話、いかがでしたでしょうか。 2024年の一番マグロには一体いくらの値が付くのか。落札者は「すしざんまい」なのか「ONODERAグループ」なのか…是非ご注目ください!
