2025-02-28
第23話 TVロケスポットとしての空港
皆さんはテレビドラマを見る機会はありますか?私は地上波を見る機会がめっきり減ってしまい、もっぱらサブスクの動画配信サイトか、YouTubeを視聴しているのですが、世間の話題についていけなくなるのではないかと、不安で夜しか眠れない日々を過ごしています。テレビ離れが叫ばれる昨今ですが、依然として大きな存在感を放つテレビ放送。その中でも特にドラマコンテンツは、世相を映す鏡でもあり、気軽に楽しめる娯楽として多くの人の生活に根付いています。
報道番組はその性質から撮影許可のハードルは低いと思われますが、娯楽に分類されるドラマやバラエティ番組の場合、その許可撮りについて時に困難を伴います。特に、日々沢山の人が利用する空港ではその影響も大きく、受け入れのハードルは一層高くなります。いうまでもなく、日本で一番利用者が多く混雑している空港は羽田空港です。羽田空港での撮影許可は降りづらい傾向にありますが、様々な工夫を施すことで、これまで数々のドラマに登場しています。いくつか例を挙げてみましょう。
① 半沢直樹(2020)(TBS系列)
言わずと知れた超人気ドラマの続編。第5話(帝国航空編)に登場します。まず、出発ロビーを視察するシーンですが、こちらはコロナ禍で休止中だった第2ターミナル国際線施設にて撮影をされています。また、帝国航空のグレートキャプテンが登場する制服の試着シーンで使用されたのは、第1ターミナル6階にある多目的ホール(ギャラクシーホール)です。いずれも空港利用者に干渉しない場所のみで撮影が行われました。
➁ オー!マイ・ボス!恋は別冊で(2021年TBS系列)
第1話で上白石萌音さんと菜々緒さんが出くわすシーンで登場します。空港内での撮影は昼間に行われていますが、①と同様、第2ターミナル国際線施設とその前にあるカーブサイド(車の乗降場)でした。
➂ NICE FLIGHT!(2022年テレビ朝日系列)
管制官とパイロットの恋愛ドラマということで、主な舞台は管制塔と航空会社・機内でしたが、一部羽田空港のターミナルも登場しました。第1ターミナルの展望デッキと出発ロビーが映ったように記憶しています。展望デッキは旅客導線上になく、部分的にクローズすることで影響も軽微ということで撮影が許可されたものと思われます。また、出発ロビーについては、利用者のいない夜間に撮影されたものと思います。以前、フジテレビ系列で放送されたTOKYOエアポート~東京空港管制保安部~(2012年)というドラマで登場したのもこの2か所でした。
現在、羽田空港第2ターミナル国際線施設についてはANAの国際線の半数以上が出発するターミナルとなっており、今後ドラマなどには登場しづらくなるものと思われます。ちなみに、星野源さんが2021年にリリースした「不思議」という曲のMVが撮影されたのも同所でした。
上記の通り、羽田空港の場合、旅客導線上にない場所か、利用者のいない夜間のみに限って撮影が行われており、それ以外の撮影は実質認められていないという状況があります。
羽田空港第2ターミナル国際線施設。
最先端の設備で、窓ガラス越しには駐機中の飛行機が映る絶好のロケスポットだったが、
コロナ禍による使用休止が解かれた為、登場機会は大きく減りそう。
さて、成田空港はどうでしょうか? 実は、成田空港はテレビドラマ等のロケに非常に協力的な空港と言えます。もちろん、どこでも撮影ができるというわけではなく、定番のスポットは自ずと限られてきます。おそらく、一番よく登場するのは第1ターミナルの南ウイング4階(国際線出発階)にある、タリーズコーヒー前の待合スペース付近だと思います。ターミナルの隅にあり、広いスペースに沢山の椅子があることで、多少クローズしても影響が軽微である上に、窓ガラスの後ろには駐機している飛行機がバッチリ映り込むスポットだからです。
近年ですと2024年元旦に放送されたテレビ朝日の「相棒 Season22」で同所が登場。水谷豊さん、寺脇康文さんはじめ、捜一トリオを含めた豪華なメンバーが一堂に会するシーンが撮影されました。また、2023年にTBS日曜劇場で放送された「ラストマン-全盲の捜査官-」の最終回では、主演の福山雅治さん、大泉洋さんの別れのシーンが撮影されました。また、少々古いですが、有名どころだと2017年に放送されたフジテレビ「コード・ブルー ドクターヘリ救命救急 3rd Season」第8話で、倒れた人の手当てをするシーンが撮影されています。
第1ターミナル南ウイングのテレビロケ頻出スポット。
中央やや左の特徴的な形をしたオブジェや、シチズンの時計塔は良く映り込む。
それ以外にも、日曜劇場「A LIFE~愛しき人~」では木村拓哉さんが、同じく日曜劇場の「集団左遷‼」(2019年)では福山雅治さんが、テレビ朝日「おっさんずラブ-in the sky」では田中圭さん・吉田鋼太郎さん、フジテレビ系列SUITSでは織田裕二さんが…と、同所での撮影事例は枚挙にいとまがありません。
成田の場合は羽田と異なり、白昼堂々多くの利用者がいる時間帯に、ターミナル内の一部を”せき止めて“ロケを行っています。誤解を恐れずに言えば、公道における撮影に近いスタイルが採られています。私も少なからずそのような場面に遭遇したことがあり、昨年2024年の8月には車いすに乗った織田裕二さんを見かけました。調べてみると、単発ドラマで車いすに乗った刑事役という設定のドラマがあり、今後放送が予定されているとのことでした。
モンゴルを舞台にした日曜劇場「VIVANT」に撮影協力をしたアエロ・モンゴリア航空。
ちなみに機内での撮影は、同社の協力により、本物の機体の中で行われたとのこと。
ところで、一昨年2023年の話題作となったTBS日曜劇場のドラマ「VIVANT」でも、話の中では成田空港が登場します。ただ、実際には「成田空港として」登場したシーンが撮影されたのはモンゴルのチンギス・ハーン国際空港だったそうです。私は見ていて「成田空港ではないのでは?」と違和感を覚えましたが、案内サイン類は日本でおなじみのスタイルのものに差し替えられている為、よほど注意しないと気が付けないかもしれません。私も気になり調べてみると、現地に詳しいロケ地巡りサイトなどで、同空港内での撮影なのだと確認することができました。もっともVIVANTの場合は、成田空港での撮影がNGだったというよりも、モンゴルでのロケが中心だったので、同空港内で撮影をする方が都合良かったという事情があったのかもしれません。リアルをどこまで追求するのか…予算やスケジュールとの闘いもありそうですね。
ちなみに、空港の代わりに空港っぽい場所で撮影が行われることもよくあります。その中でもとりわけ登場機会が多いのが、お台場にあるテレコムセンタービルです。調べてみると「テレコム空港」という通称まであるそうで、本当によく出てきます。大きな吹き抜けの構造が空港っぽいことに加え、都心立地で空港まで出向くよりもお手軽という事情もあり、重宝されているようです。