豊洲市場で一世一代の大勝負~TV取材殺到でバブル到来?
築地市場見学ツアーの参加者も徐々に増え始め、成田空港・国会議事堂との三足の草鞋も厳しくなってきました。特に、築地は今後参加者が増えることが見込まれ、のどから手が出るほど欲しい売り上げをみすみす逃すわけにもいきません。そこで、初めてスポットガイドとして従業員の方を雇用することになりました。これまでは一人でご案内をしているだけでしたので、ある意味で気楽でしたが、ここからはお仕事を割り振ったり、お給料を支払ったり…と、いわゆる労務管理をしなければいけなくなります。これまで士業の先生にお世話になったことはありませんでしたが、保険会社の方のご紹介で社労士の先生と顧問契約を結ぶことになりました。手探りでやってきたので、事業に必要なことも教えてもらわないと気が付けないような有様だったのです。
豊洲市場の移転が近づくに連れ、築地ツアーの需要は右肩上がりで増えていきました。もう1人のガイドさんのおかげで需要にも応えることができ、これまで募集ツアーばかりだったところから、20名様規模の小団体の貸切利用にも対応できるようになりました。今となっては、個人参加よりも団体の貸切利用のニーズの方が圧倒的に多くなったわけですが、この時点では全く想像もできないことでした。
さて、いよいよ築地市場の閉鎖が目前に迫ってきたある日、もう1人のガイドさんと豊洲市場のツアー企画について相談することになりました。開場前ではありましたが、幸い2人とも都民見学会で豊洲市場に一度ずつ足を踏み入れることができていたので、どんなルートでどんな内容でご案内が出来るか、イメージすることができました。ただ、一つ大きな問題がありました。豊洲市場は見学者通路も整備され、見学客を受け入れることは確定していましたが、その時点でグループ見学ができるのかどうか、人数制限等について情報が一切なかったのです。旅行会社も軒並み様子見で、豊洲市場のツアーに関しては全く動きがありませんでした。本来であれば開場後に様子を見て、出来ると確証を持てた時点でツアーの販売をスタートするのが正しいと思うのですが、私はここで大きな賭けに出ました。ツアーが実施できる保証がないのにもかかわらず、フライングでツアーを販売することにしたのです。
とはいえ、一般開放の初日である開場2日後の10月13日(土)よりツアーをするのは、あまりにも冒険なので、1週間様子を見ることにし、翌週の土曜日からスタートすることにしました。そうすれば、その1週間の間に情報も集まり、最悪ツアーが実施できなければ、お客様にお詫びして返金をすればいいと考えたのです。そしてこの判断は、思わぬ形で大当たりを引き当てることになります。
閉場間近ということで、築地ツアーも募集すればするだけ売れるような状況になっていました。連日のご案内で多忙を極める中、なんとテレビ局からの取材オファーが次から次へと舞い込んできたのです。ボツになったものも含めると7番組はあったかと思います。
ツアー企画者として豊洲市場をどう見るかという趣旨のものがいくつかありました。1時間ほど撮影して30秒未満のオンエアになったものもあれば、10分近いオンエアになったものもありました。一番印象に残っているのはWBS(ワールドビジネスサテライト)です。移転延期について、小池都知事を批判しているように見えるようなシーンがオンエアされていたからです。これには思わず笑ってしまいました。実際には移転延期には大いに感謝をしなければいけない立場なんですけどね。
(ワールドビジネスサテライトに出演した時の筆者)
そして、出演なしとのことであまり期待していなかったのが「羽鳥慎一モーニングショー」でした。豊洲ツアーの内容を紹介したいとのことでしたので、写真を何点かとツアー内容を文章にしたものをTV局に送りました。写真のクレジットはどうしますか?と聞かれたので、「提供:ミキキートス」と入れて下さいと伝えました。そして、このクレジットのおかげでミキキートスという名前がテレビに映り込む時間が長くなり、とんでもないことになったのです。
たまたまオンエアの日の朝は空いていたので、テレビを点けてリアルタイムで番組を見ていました。豊洲市場を紹介するコーナーになり、ミキキートスという文字がテレビに映った直後から予約通知のメールが鳴りやまなくなったのです。おそらく、1分に1件くらいのペースで予約が埋まっていったと思います。皆さん”ミキキートス”というキーワードを頼りにインターネットで検索し、予約をしてくれたようでした。私は、このチャンスを取りこぼすまいと、必死にツアーの追加設定を行いますが、設定した分からどんどん満員になっていきます。私はテレビの力を改めて思い知ることになりました。
ツアーの定員を14名としたので、ガイド1人で14名×2人=28名を同時に案内できるのですが、それを9時開始と12時半開始の2回転設定することで、1日に60名近いお客様をご案内することになります。以前は1日に6名様しかお客様がいないなんてこともザラでしたから、その10倍近いお客様にご参加頂けるということで、まさに豊洲市場特需に沸きました。
無事に開場を迎え、ツアーの実施も問題ないということが確認できた為、待望の豊洲市場見学ツアーがスタートしました。時間が多少押したりすることはあったかと思いますが、築地をご案内してきた知識を応用することで、スムーズにご案内をすることが出来ました。真新しい施設で、まだ誰も案内したことがないような状況でしたので、仮に分からない質問が来たとしても「開場したばかりなので…」が通用することもあり、ある意味で気楽にご案内ができました。
築地ツアーは後発も後発で、他社の後塵を拝してきましたが、豊洲移転でそれがリセットされ、開場当初からご案内をしているツアー業者となれたことも、ミキキートスにとって大きな意味を持ちました。
(豊洲市場をご案内する筆者)

EventOffice ミキキートス代表。
中央大学卒業後、観光とは異業界での勤務経験を経て、旅行会社で国内外の添乗員・ガイド業務に従事。
2015年からは、主催のミキキートスにてイヤホンガイドを使用した参加型ツアー事業を開始。「大人向け社会科見学」や「親子でまなぶ」をコンセプトとし、築地/豊洲市場、成田空港や国会議事堂見学をはじめとした多数の人気ツアーを企画。
「名物ガイド」として多くのメディアで注目を集める。
新型コロナ禍以降は、オンラインツアーガイドに注力。最近では観光地や企業とのコラボイベントも始まり、コロナ禍でも多忙な日々を過ごす。
目下“偉大なる素人”を目指して邁進中。
WEBサイト:https://www.mikikiitos.com/